数年前、諸所の事情で某民放が某格闘技イベント中継権の放棄を発表した際、NHKの関係者に「ぜひ、中継を引き継いでください」と提案したことがある。
地上波で当たり前のように中継されていたものが、何がしかの理由で突如、視聴できなくなる。それを楽しみにしている視聴者にとっては残念でならない話だ。無論、有料多チャンネルで中継が引き継がれるケースもあるだろうが、視聴するために料金が発生する以上、万人向けサービスとはいえない。「だからこそ、視聴者保護の観点でNHKが動くべき」というのが僕の理屈だった。
理由はもうひとつある。某民放が中止を言いだした理由は明らかにされなかったが、どうも「裏家業とのつながり」が噂されていた。これでは、視聴率に関係なくスポンサーが納得しない。中継権放棄もやむなし、といったところだ。
しかし、NHKはスポンサーを気にする必要はない。もちろん、実質的なスポンサーたる国民の声は尊重すべきだろうが「裏家業とつながりのあるイベントを中継することで、NHKに受信料を払っている自分のイメージが悪くなって仕事ができなくなった」ということは起こりえない。それを理由に受信料支払いをやめると言い出す方は、法廷闘争に持ち込まれる前に放送法におけるNHK受信料支払いの定義を見直したほうがいい。
要は「何があろうと、NHKは今回の大相撲中継を中止すべきではなかった」ということ。放送局、まして公共放送NHKの使命は、あくまで国民の関心事を伝えることにある。番組を契機に製品の訴求やイメージアップを図る必要もなければ、視聴率を稼いで広告料を吊り上げる必要もない。根本的な立場が某民放や永谷園とは違うのだ。
ジャーナリスティックな観点で問題点を追求するのはいい。が、放送を取りやめるというのは一種の制裁行為。放送を行った上で「視る・視ない」を視聴者の判断に委ねるべきであり、唯一の公共放送局として「伝えること」に意義を見出してほしかった。
ちなみに、某格闘技イベントの話は「おもしろい提案だけど・・・難しいね」ということで実現しなかった。多くの「放送してほしい」の声が寄せられ、また個人的には「今度こそ」の思いがあっただけに中止決定は残念でならない。
高瀬徹朗(本誌特別記者)






























