「ご高齢の方など、インターネットを使いこなせない視聴者は少なくありません。それでは、いかに役所や警察署がHPを充実させても意味がない。そこでPCよりも使いやすいテレビのリモコンで操作できるデータ放送を活用することにしました」。
残念ながら、これは放送事業者のコメントではない。6月に控えるイベントに向けて取材したあるケーブルテレビ事業者が、自主放送向けデータ放送のコンセプトについて説明した内容である。
情報格差(デジタル・デバイド)の解消―。データ放送、というよりデジタル放送化自体の大きな目的であったはずのテーマだ。が、今では「データ放送非対応テレビ」なるものが登場し、むしろ「データ放送だけに情報を出すとデジタル・デバイドを生みかねない」という訳のわからない状況となってしまった。
その本流が、いまも生きている。それも、ケーブルテレビのコミュニティチャンネルというマニアックな(?)分野で。00年12月のBSデジタル放送開始以来、取材記者の立場ながら長くデジタル放送化の現場に立ち会った者として、ある種の感動を覚えた。
無論、すべてのケーブルテレビ事業者が同じ意識、というわけではあるまい。また、地域密着へのこだわりというある種の原点回帰が、大手通信事業者の圧倒的な攻勢にさらされることで生まれた危機感の顕れであることも事実だ。
それでも、基本理念が消え去っていなかったことへの感動は大きい。都会で失われた純粋さを帰省先の田舎で探し当てたようなもの(注:話を聞いたケーブルテレビ局は東京の真ん中辺がサービスエリア。私自身は東京都新宿区出身)だろうか。
ちなみに、ケーブルテレビセットトップボックスの中にも「データ放送非対応端末」なるものが普通に存在するそうだ・・・あしからず。
高瀬徹朗(本誌特別記者)